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はてさて。
あの来訪から早数か月。
「やっほい、ルシフェル。遊びに来て上げたよ。なんか面白い噂なんてないの?」
言いながらふわり、越えた壁の向こう側。
ぽかんと口を開いたままの男が1人、紅茶が零れるのにも気づかぬ様子で空に浮く彼女を見上げていた。
翼のない女を浮かせるのは、風の力。
――やがて音もなく地面に降り立った彼女は、ひどく重たい音をたてる。
「これこそまさしく、10点の着地だね!」
誰に言うでもなく黄色のローブをひらりと揺らす。
聞こえたため息深々と。
振り返る女は、にぃと笑う。
「なになに、ケロが遊びに来たらマズイことでもあったのかな?」
それはそれは楽しげに言った彼女は、ぽんと手を叩く。
にこにこといい笑顔、懐から取り出したるは、ローブと同じく黄色いノート。
後ずさる魔王を前に、黒いい笑顔で近づいていく。
躊躇いなんて必要ない。
力の差なんて、情報力で消し去ろう。
「さ、洗いざらい白状してもらっちゃおう。……あ、もちろん拒否権はないよ?」
愉しそうな瞳に見据えられ、ルシフェルはぎりりと唇を噛んだ。
†
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