その理由たるや

3/5
前へ
/37ページ
次へ
けれど不意に彼の背後、響き渡る轟音は。 瞬間揺れたつむじ風。 気付けば女はそこにはおらず、代わりに居たのは崩れた壁と。 それからぐるぐる、目を回す怠惰。 先日よりも成長した赤子は、不思議そうな表情でルシフェルを見上げる。 「……」 冷や汗ぬぐい、顔を上げると、苦い笑みを浮かべた魔王の一角。 崩壊した壁の向こう側、ベルフェゴールとルシフェルとを交互に見て。 ぴゃっと引っ込みそうになったその姿、地面を蹴って手を伸ばし、彼の長い髪をわし掴む。 「バアル、」 低く響いた、声に。 赤髪の男の身が、びくりと跳ねた。 「よ、よぉ、ルシフェル」 彼の顔を見るのが怖い。 いやもう、このパターンはあれだ。 絶対キレてる、魔王化してる!! だってほら、髪を掴む掌から電気がびりびりって……あれ? 「壁のことは後で聞くとして、助かりました」 響く声、安堵のソレ。 きょとんとした表情を浮かべたバアルだったけれど、ああ、と気の無い返事を吐きだした。 †
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加