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けれど不意に彼の背後、響き渡る轟音は。
瞬間揺れたつむじ風。
気付けば女はそこにはおらず、代わりに居たのは崩れた壁と。
それからぐるぐる、目を回す怠惰。
先日よりも成長した赤子は、不思議そうな表情でルシフェルを見上げる。
「……」
冷や汗ぬぐい、顔を上げると、苦い笑みを浮かべた魔王の一角。
崩壊した壁の向こう側、ベルフェゴールとルシフェルとを交互に見て。
ぴゃっと引っ込みそうになったその姿、地面を蹴って手を伸ばし、彼の長い髪をわし掴む。
「バアル、」
低く響いた、声に。
赤髪の男の身が、びくりと跳ねた。
「よ、よぉ、ルシフェル」
彼の顔を見るのが怖い。
いやもう、このパターンはあれだ。
絶対キレてる、魔王化してる!!
だってほら、髪を掴む掌から電気がびりびりって……あれ?
「壁のことは後で聞くとして、助かりました」
響く声、安堵のソレ。
きょとんとした表情を浮かべたバアルだったけれど、ああ、と気の無い返事を吐きだした。
†
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