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恋。
それは、治す方法のない病。
抉られる様な、胸の痛み。
背中まで突き刺さる様な激痛。
涙を伴う事も多く、それは、とても冷たい事が多い。
切なさという独特の感情を産み出し、辛く苦しいものさえも感じる、精神症状。
時に、強かになり、惨めにもなり、そんな自身がどうしようもなく嫌にもなる。
叶う筈などない。
そう思う事がほとんど。
極稀に、自信たっぷりの場合もあるが、この多くは、より大きな痛みを感じている事も多い。
他の誰よりも私を、俺を見て欲しい。
他の誰にもその笑みを向けないで欲しい。
それは時に、可憐に咲く花や、愛らしい動物、暖かな風、愁いを感じる夕陽、燦々と煌めく星や月。
そんなものにさえ、同一の感情を抱く事もある。
この症状を抑える、唯一の薬。
それは、貴方、貴女の温かで、優しくて、見てしまうだけで、自身が自然と微笑んでしまうその笑顔だからだ。だからこそ、嫉妬という感情を産み出してしまう。
それを向けられるだけで、症状は和らぐのだが。
だからこそ、これは副作用を伴う場合が多いのだ。嫉妬とはまた別の感情で、これは言い表しようのない感情。
その人がその場からいなくなり、独りになってしまったその時。切なさが急上昇してしまう。
そして、痛みを増幅させてしまう。
辛くて、苦しくて、どうしようもなく痛い。
なのに、人は無意識のうちにこの病を患ってしまうのだ。専門家ですら治す事の出来ない病に。
患いたくなどない。
そう思っても、一生のうち一度は、ほぼ100パーセントの確率で、患ってしまう。
症状の度合いには差はあるのだが、それは、下心という別の括りに位置づけられる。
これほどまでに人を苦しませる病。
なのに、特効薬の1つもない。
正しく言えば、作ろうとしないのだ。
なぜなのだろうか?
こんなにも辛いのに。
答えはシンプルだ。
『好き』とも言えず、言っても貰えず。
苦しんで、痛めてまで、特効薬を作らない。
狂っているとさえ思われ、それでも構わないと思い、愛おしいその人さえいればいいと思ってしまう。苦しいと分かっていながら。その人が笑ってくれればいいと。
そう。
どんなに辛くても、苦しくても、狂っても。
私達は結局、『恋をしたい』のだ。
果てはその人を『愛したい』のだ。
欲張りで、傲慢だと分かっていながら。
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