妖しい気配

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暗黙の了解で この日、私と渉さんは少し早目に帰宅することにした。 渉さんの態度は私をホッとさせてくれたけど、 私も渉さんのことを安心させてあげたかった。 今日の部署回りのことが気になっていた。 もしかしたら、渉さんは直接阿部さんに会ったのかもしれない。 でなければ、渉さんが唐突に彼の名前を出すはずがない。 もしも渉さんが私を想っていてくれるなら きっと今、 渉さんは不安になっているかもしれない。 それが私の自惚れでも 私は… そうしてあげたいと思った。 定時過ぎの社長室。 明日の予定の確認も終わって、退室する前、 私は渉さんの耳元で囁(ササヤ)いた。 「…早く帰って…待ってます」
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