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「…彼…?」
「そ、菊森室長」
…菊森室長…
私は彼女と同じフレーズを心の中で呟いた。
「…秘書室長ですもん…滅多にここには見えませんよ」
「そうかなあ…」
「そうですよ」
「じゃあさ…」
私はその続きを聞きたくはなかった。
時計の針がタイミングよく動き出す。
鳴り出したチャイムが一秒も聞こえないうちに、私は席を立った。
「あ、私、頼まれてたことがあるんで」
少しでも早く離れたかった。
彼女に背を向けて一歩踏み出した私の背中から聞こえてきたのは彼女の乞うような粘り気のある声。
「ねえ。近いうちに3人で食事しない?」
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