恋敵 コイガタキ

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「へえ…野崎さんて、ホントこういうの得意って意外だよね」 私がキーボードを打ち続ける姿を見て、依頼をしてきた小川先輩が言う。 「…他には何も出来ないんですけどね」 私がブラインドタッチで指先を動かしながら返事をすると、先輩は私の腕をパチンと叩いた。 最近はよく先輩たちにこういう反応をされている。 「なーに言ってんの。こういうの、すごいじゃん!なんかあった時にシステム課の人呼んでたら遅くなるばっかりだし、だからといってこの部署、PC関係強い人いないんだよね…。ホント、すごい。憧れちゃうよ」 「あ…憧れなんて…そんな…」 「ただのお嬢さまだと思ってたのに、案外根性あるし、こんな特技もあるし、ホント、見直しちゃった」 胸の奥に温かいものが広がっていく。 小川先輩に限らず、営業部の女性たちは歯に衣着(キヌキ)せぬものの言い方をする。 職業柄か、対外的にはかなり言葉遣いには慎重だけれど、社内ではズバリと言うのだ。
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