恋敵 コイガタキ

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私はキーボードの上の手先を緩め、小川さんに少しだけ顔を向けた。 「…私…少しずつでも…変われてますか?」 ショートカットで化粧っ気のあまりない小川さんの顔がくしゃりと潰(ツブ)れる。 「もともとのあなたを知らないんだけど…少なくとも、ここに入った当初よりはすっごい変化よ」 頬の一部に熱が発生する。 「あり…がとう…ございます」 そう言いながら最後のキーを打つ。 「…できました」 「ホント!?」 「確認してみてください」 私は小川先輩に席を譲った。 先輩が画面の前で操作すると、彼女の表情からうまくいったのだとホッとした。 先輩はさっきと同じくしゃくしゃの顔で私を振り返る。 「ありがと!」 …人から感謝される喜びを 私はまた…噛みしめていた。
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