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放課後のテニスコート。
私は汗まみれになりながら、黄色いボールを追いかける。
「10分休憩!」
顧問の山田先生の声に「はいっ」と叫び、リストバンドで汗をぬぐう。
水分補給しようとベンチに行くと、近くには優の姿がある。
木陰の下に用意された教師用のパイプ椅子に座り、長い足を組んでいる。
――あの海の日から2週間。
今までその手にあった本の変わりに握られた鉛筆。
その鉛筆で教室でも部活でも。
場所や時間にとらわれず、優は絵を描き続けていた。
私の姿を――。
「また描かれてるよぉ」
「愛されてるね~」
優があまりに人目を気にせず描き続けるので、援助交際の噂と入れ替わり“優と美希の交際説”で校内は持ちきりになった。
恥ずかしいけど、これでよかったんだと思う。
あんな噂より全然いい。
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