第5話*元カノ

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放課後のテニスコート。 私は汗まみれになりながら、黄色いボールを追いかける。 「10分休憩!」 顧問の山田先生の声に「はいっ」と叫び、リストバンドで汗をぬぐう。 水分補給しようとベンチに行くと、近くには優の姿がある。 木陰の下に用意された教師用のパイプ椅子に座り、長い足を組んでいる。 ――あの海の日から2週間。 今までその手にあった本の変わりに握られた鉛筆。 その鉛筆で教室でも部活でも。 場所や時間にとらわれず、優は絵を描き続けていた。 私の姿を――。 「また描かれてるよぉ」 「愛されてるね~」 優があまりに人目を気にせず描き続けるので、援助交際の噂と入れ替わり“優と美希の交際説”で校内は持ちきりになった。 恥ずかしいけど、これでよかったんだと思う。 あんな噂より全然いい。
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