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「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!あんの、デブ!」
「…鞠亜、飲みすぎ。それに、デブゆったってあんたの元彼でしょーが」
駅前の居酒屋の角席に女二人。私、桜木鞠亜と羽小谷日奈子。
「あー、もー!また失敗!あいつ!デブでブサイクのクセに何で出っ歯女選ぶのよぉ!!」
飲み干したジョッキを机にガンッと力強く叩きつけた。
「本当、見る目ないわあいつ!!サイアク!!」
私の方が間違い無く、あの出っ歯女よりも可愛いのに!美人なのに!!
「…まぁ、あの元彼が見る目ないのは否定できないわね。何せ、鞠亜のこと好きだったんだもんね」
「……どーゆー意味よ…」
言い切る彼女を睨んだけれど、しらっと交わされた。
「そのまんま。あんた、どーせまた『私の方が可愛い』とか、『私の方が美人』とか、思ってんでしょ」
「…うっ…」
図星だ…。
言葉に詰まらせていると日奈子はカランとグラスを傾けた。
「そんなだから毎回フられるんだよ。あんた、黙ってれば並みより美人なんだから。調子乗ってないでさぁ…」
さらに核心付かれて唇を尖らせた。
「元彼達は知らないもん。私の本性」
「知らないったってねぇ、第一に、あんた今までの恋人好きだったことあるの?鞠亜が自分のこと好きじゃないことぐらい相手だって気づくよ」
「…好きになる前に別れちゃうの…!」
そう…。告白してくるのはあっちのクセに、フられるのはいっつも私。
好きになる努力だってしてる。
…なのに、あのブサイクどもが…!
黙り込む私に日奈子はため息を落とした。
「…ねぇ、あの人なんかどう?なかなかカッコいいじゃない…?」
そう言った日奈子の指先には世に言う“イケメン”。
自分から恋しろって。
日奈子の目は言ってる。
でも。
「やだ」
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