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躊躇なく…外し…
外し…
って、…あれ?
外れない!?
「ちょっと…待ってよ…」
やだやだやだやだやだやだっ!
外れなさいよ、このバカっ!
最後まで迷惑なヤツなんだからぁー!
「はぁー…痛い…」
引っ張りすぎて小指は真っ赤になっていた。
その小指を見ていると、何故かどうしようもなく不憫に思えてきて…自分が情けなくて…
もぉ…何やってんだろ、私。
涙目になりながら近くのベンチに座った。
滑り台とかブランコとかあるから…ここは公園かな…。
漠然と思いながらも深い溜め息を付くと、ふっと暗闇から人影が揺れた。
「…大丈夫ですか……?」
「…え?」
低い声は静かな公園に響く。
男の人は私の手を見てふっと笑ったかと思うと、私の手に自分の手を重ねた。
「ーっ!?」
ビクッと体を揺らす私に優しい声が降り注ぐ。
「指輪はね、抜けないときはこうやって捻りながら引くと抜けるんですよ」
彼が私の手を取って再現すると、指輪はスルッと、いとも簡単に小指から離れてくれた。
「…あ、ありがとうございます…」
「いいえ」
穏やかなその声の表情が知りたくて。
私は顔を上げた。
すると、そこにいたのは紛れもない“イケメン”。
あの、“イケメン”。
そう分かった時、私はその場から走り去っていた。
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