第1章 彼女の本性

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…あっぶなかった…。 もう少しでイケメンとの繋がりが出来てしまうところだった。 息を整えながらタクシーを呼んで、家に着いたのは9時半だった。 一人暮らしのアパート。 真っ暗なこの部屋に帰ってくるのにはもう慣れた。 手を洗うとき、小指に手をかけて気づいた。指輪が無いことに。 「あの人が持ったままだ…」 ……ま、いいか。 もう会うこともないだろうし。 あれ、要らないし。 あ、でも指輪に付いたピンクダイヤモンド…あれって高いんだっけ? ………売ればよかった。 小さな後悔だ。 あの指輪、可愛いくてお気に入りだったんだけどね。私好みで。 あのデブ…じゃなくて、元彼、金持ちでさ、すんなりピンクダイヤモンドの指輪買ってくれて…あの時は見直したなぁ。 なんて。 別れた男に貰った指輪なんかしてたら未練タラタラに見えるか……ヤダヤダ…。 あいつにゾッコンな私を想像して寒気がした。
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