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「犯人もこれと同じ事をしたんじゃないでしょうか? チョコの入った全く同じカゴが2つあった。ただし、片方は全部毒なし、もう片方は全部毒入り。」
美幸が語る。
「この方法には利点があります。犯人は事務所の外で被害者が来るのを待ち、カゴを取り替えます。その事務所内にいない事が逆にチョコを取った後にすり替える事が自分には出来ないというアリバイになる。」
美幸は更に続ける。
「そして、たまたま先に来ていた人が用事があり事務所を出て被害者がチョコを取るところを目撃したとしても、カゴとチョコが同じなら自分達が取った時と違うとは思われません。」
「なるほど。そして、確実に被害者だけに毒入りを取らせながらも、無差別殺人のように思わせる事が出来るわけだ。」
弓宮が頷きながら美幸の話を聞く。
「もちろん、利点は欠点にもなります。犯人は事務所にいなかった人物。そして、同じカゴがまだどこかに隠されているはずです。」
「って事は証拠隠滅される前に急いで現場に戻らなきゃだな。ありがとう、美幸ちゃん! 助かったよ!」
弓宮はそう言うと駆け出す。
「あ、弓宮さん、これ!」
美幸はそう言うと小さな箱を弓宮に投げた。
綺麗に包装されたそれには《happy Valentine》と書かれたシールが貼ってある。
「ありがとう! 君から貰えるなんて最高だよ! じゃ、また後で。」
弓宮は箱をキャッチするとそのまま資料と一緒に持って行った。
「それ交通課のみんなから……って、もう聞こえてないか。」
それにしても、チョコレートを渡すタイミングとしては最悪ではある。
弓宮ならば、毒入りだったとしても美幸からのチョコレートなら食べてしまいそうだが。
美幸は弓宮の背中を見送った。
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