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痛い…暗い…僕にはその記憶しかない。 暗くカビ臭い湿った牢に何年閉じこめられていたのかはもうわからないが長い間、閉じこめられていたような気がする。 日本の四季も感じられず僕の中での時の流れが狂ってしまった。 『…さぁ出ろ!』 男に言われて牢から出て…それ以降の記憶もなく気がついたら自分の手には生暖かい鉄のにおいがする真っ赤な血がついていてまわりにはたくさんの死体が転がっていた。 そして僕はそこから抜け出した。久しぶりにみた空は眩しくて目を細めてみると澄んだ青い色をしていて雲の一つもなかった。 シャツ一枚で血の付いているせいか周りからたくさんの視線が集まる。あまり良いものではなく僕の行く先は自然と路地裏に向かっていた。 多分、水分も食事もしてないのだろう。体から力が抜けていきその場に座り込んだ。 その状態で何日経っただろう?座っていたはずが体は横になっていてコンクリートの地面がとても近くに見えた。
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