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雨が降り始める。乾いたコンクリートが濡れていき僕の体も濡れシャツが体に張り付き気持ちが悪い。
動く力もなくただ横たわって息をしている。あの牢の中と何にも変わりない…。
「大丈夫か!?おいっ!」
僕は死ぬのだろうか…?
雨の音が耳から頭の中に響き渡る。
「…雨…音……聞こえる…」
音が一瞬で消えた。そして僕はまた暗いところに戻ってしまった。
できることなら明るいところで生きてみたいと思っていた。何年いたかわからない牢の中で出られる希望がほとんどない牢の中での微かな願い。
僕には記憶がない。だけど、牢の中は良いところなんて感じることなんてできなかった。
だから、牢を出て外に出られたとき嬉しかった。想像していたより明るい世界で眩しくて願いが叶ったと思ったのに…。
「おっ!気がついたか」
あれ?僕は…
「ここは…」
「俺の家だ。お前が倒れていて病院に連れて行こうかと思ったが訳ありみたいだしな…」
温かい笑みを浮かべる人だ。
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