第1話

Ⅰ

「はい…」
「悪かったな…」
「いえ…僕はこれで失礼します」
あの人、陽一さんが注意しろと言っていたヤクザって人たちかな？
でも、危険な人のようには思えなかった。栗毛の髪に背が高くすらっとしていて少し筋肉がついていてきれいな顔をしていてそれから綺麗な青い瞳をしていた。

『清…清…君はきれいだ…』

なんでだろう？懐かしい…清…僕の前の名前？
最近、よく記憶がよみがえる。記憶なのだろうか？牢に入る前の記憶だろうか？
考えても答えが出ない。僕は考えるのをやめて眠りについた。

知っている…緑の野原、金色に光る太陽…透明な湖に隣には僕を愛してくれていたらしい人がいた。僕は彼の膝に頭を乗せ眠っていて彼は僕の頭をなでていた。

「雨音、起きたか」
「おはようございます…」
「具合はどうだ？」
「もう大丈夫です…」
あれは記憶。
彼は誰なんだろう？そして僕は何者なんだろう？