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「あの、内頬って、何をどうするんですか?」
「ちょっと細胞が欲しいんだ。
内頬の粘膜を綿棒でこするだけなんだけど……いいかな?」
検体提供、か。
珍しい事でも何でもない。
落胆の気持ちを押し隠して、にっこりと微笑み、私は快く協力を了承してみせた。
友人たちが羨望の眼差しで見守る中、氷室さんは私の隣りの席に腰掛けて、キャップ付きのプラスチック試験管と綿棒を取り出す。
「はい、口開けて」
「────は?」
戸惑っているうちに顎に指が掛かり、上を向かされ、
「大丈夫痛くないから。あーんして?」
「……あーん」
差し込まれた綿棒が、頬の内側を優しくこする。
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