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現在時刻は十二時半。の筈。時計もケータイもマイホームの中なので、お天道様のポジショニングで判断。
駅前広場のベンチに腰掛け、現役ニートな俺こと岡山健太は、春の陽気に間抜けに呆けていた。ニートと表記したが、親の脛を美味と評する人種ではなく、中学生と高校生の狭間で苦悶する微妙なお年頃といった意味だ。勘違いしないでよねッ!
ゴメン自重する。主に俺のメンタル的な問題で。
割りと真剣に吐き気を催しながら、何がしたかったのか冷静に把握してみる。
ツンデレった理由→特に無し。というか思い出す度に精神がゴリゴリ磨り減るためパス。
今ココにいる理由→人類が存在しているから………違う。誰がそんな哲学回答をしろと命令した?いいえ誰でも。反語を用いて強調してみたり。
最適解は待ち合わせ。呼び出したのではなく呼び出された、一時間前に。俺の耐久性能でも調査してんの?と尋ねたくなるほどの待たせっぷりだ。早春だというのに肌着は汗で重くなっている。不快指数上昇中。
帰ればいい、との意見も俺の中に無いでもないが、もしも待ち人がその後に来て放置なんて展開は良心にチクリとくる。義理堅いのだ、俺は。
先程までは人間観察という名の不審行為に励んでいたが、青い制服の公務員が巡回しだしたために断念を余儀無くされた。誰だ通報したの、判断は正しい。だがお陰で暇を持て余した。
非情なまでに面白いことに出くわさない。今なら輪ゴムで三十分潰せる自信がある。やっぱ嘘。二十分が限界です。それでも大概だと思うけれども。
忍耐戦はまだまだ長引きそうだと結論付け、お供の飲み物を入手しに立ち上がる。幸いにも財布はポケットの中。一応中身を確認するが、大丈夫だったので自販機を探す。三周半しても見当たらないので適当にぶらついて捜索する事にして歩きだした。
そして広場を出る直前で肩を掴まれた。
「ちょっとキミ、良いかな」
疑問形なのに疑問符が引っ付いてない。顔は見えないがさぞかしアホな面構えなのだろう(確信)。全く、これだから近頃の若者は……。←高校生未満
無視する選択肢が浮かんだが、いきなり心象を悪くするのも宜しくない。第一印象は大切だ。ここは大人にニッコリと笑って対応するんだ、岡山健太。あまり柔らかくない頬を操り唇で三日月を作る。
「はい、何でしょうか?先を急い───」
お巡りさんだった。
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