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「逃げる必要はないのよ」
優へと向けられる、やさしい言葉。
「逃げるだなんて。そんなの…、自分勝手」
そして厳しい言葉。
その口調に誘われるように、ゆっくりと優は顔を上げる。
「逃げて何になるの?相手と自分を傷つけるだけよ」
「……」
「好きな人から逃げる勇気があるのなら、怖がらずに人を愛する勇気を育てて欲しいわ」
そういい、お母さんはグイッとウーロン茶をのどに流す。
「だけど、それを教えられなかった私は母親失格ね」
自嘲するように笑うお母さんを目の前にして、優のジョッキが揺れた。
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