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混乱の渦を止めたのは、国王であるカグヤだった。
ひとつ咳払いして、カグヤは静かに話し出す。
頭の中を整理する為、改めてさくらに事情を尋ねた。
さくらは、自分が桜子の孫であること、桜子から本当の祖父が他に居ると聞いた事、この世界で旅をした経緯や仲間との出会いなど幼い頃から聞いていた事を話した。
シルヴァーノとジレリオは、歴史記録では知ることが出来なかった内容も含めて耳を傾けた。
王妃は次第に涙が溢れ、王は遠い昔を思い描くように目を閉じる。
「……確かに、わたしと桜子は一度だけ身体を重ねた事がある。桜子が元の世界に戻る前に……。
王妃ーーククリと婚姻を結ぶ前、わたしと桜子は深く愛し合っていた」
王妃は静かに頷き、王は深い溜め息を吐いた。
ククリの閉じた瞳の中に浮かぶ光景は、駆け回る一人の少女。
その隣には、若かりし頃の夫が寄り添う姿。
誰よりも二人を身近で見てきたククリは、今でも桜子がこの世から消えた日を忘れはしない。
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