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桜子が元の世界へ戻った直後のカグヤは憔悴し切り、立ち直るまでに何年も掛かっていた為に先代の王は呆れ果ててしまった。
二人がどんな想いで別れを決意して惜しみ、異界という壁を悲しみながらも互いに愛し合う姿を見てきたククリには、とても目に当てられない日々もあった。
「さくら、と申しましたね」
「はい」
「桜子は、幸せに暮らしていますか?」
「はい、今も元気にお祖父ちゃんと散歩に出掛けたり、友達とわいわい楽しんでます。
けどーー」
突然影をさすさくらに、ククリが促す。
幸せに暮らしているのなら、元気で居るのなら、それはそれで良いはずなのだが、少し寂しく感じた時だった。
「時々お祖父ちゃんの居ない所で言うんです、“会いたい”って。“会いたい”って言いながら空を見上げて、寂しそうに言うんです。
ママ達は老人ボケだって思ってるけど、あれは絶対に違う。
あたしは、小さい頃からカグヤさんやククリさん達のことも聞いてました。ククリさんはお姉さんみたいで、いつも元気をくれてたって。特にいつも話すのは決まってカグヤさんの話。今まで生きてきた人生の中で、お婆ちゃんが一番愛した人は、カグヤさんただ一人なんです」
その言葉だけで、二人の胸がいっぱいになる。
再びククリの頬に涙が伝い、懐かしい記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡た。
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