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両親の涙を初めて見るシルヴァーノには、想像もつかない光景だった。
ジレリオは尚更だろう。幼い頃から国の絶対的存在であるカグヤを畏れ敬ってきただけに、さくらが現れてからの王と王妃は崩れるようだった。
「さくら、ありがとう。
王もわたくしも、かつては桜子と共に旅をした仲間でした。わたくし達にとって、桜子は掛け替えのない愛しい人なのです。
この人は最近夢見が悪く、気に掛けていましたが、ようやくその意図が理解出来ました。桜子がこの世界に訪れた時と同様、何処かで異変があり、それが国の存亡に関わっているかと推測します」
「国の存亡……、もしや、例の件ですか?」
眉間に皺を寄せて尋ねるシルヴァーノに、王は静かに頷く。
ジレリオも緊張の色を見せたが、さくらと悟にはさっぱりわからなかった。
「さくら、今この国は一見栄えていて平和に見える。
実際、民は住みやすくて治安も良い国だと感じたいるだろう。しかし、我々は今ある危惧を抱いている」
「と言うと?」
さくらは、またしてもキョトンとして小首を傾げた。
それに対し、シルヴァーノに後ほど説明するように命じる。
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