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「貴方は、あの時の事を後悔してると言うの?」
「いや、そうでは……」
「なら、いいじゃないですか。
わたしはね、桜子が居なかったら今こうしてここに居ないと思ってるの。あんなボロボロだったわたしを、桜子は分け隔てなく手を差し伸べてくれた。
そして、貴方達がどれだけ愛し合って苦しんで来たのかも知ってるわ。
あの子は桜子からの贈り物なのよ。それをわたしに気遣ってるなんて、お門違いだわ」
ククリはカグヤの手に、自分の手を重ねた。
嗜めるのと反対に、今度は不安の色を帯びた表情に変わる。
その心中を察したカグヤも、顔色が曇った。
「わたしね、あの子に会えてとても嬉しいのよ」
やがて、ククリの声が震える。
その目には、再び一雫の涙が伝い落ちた。
「ただ、あの子の子孫にはなんら危険もなく平和な世で過ごして欲しかった。
あの頃のわたしなら、迷いもなく付いて行くわ!」
「わたしもだ、ククリ。
今わたし達に出来るのは、精一杯の支援と無事を祈ることだけだ」
「……ええ、そうね。
わかってるの、わかってるのだけど、この胸がもどかしいのよ……っ」
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