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いつもの帰り道。
私は今日も彼と同じ道を通る。
彼は気怠そうに
口を開いた。
「昨日、また父さんに言われたんだ。ゲームする時間があるなら勉強しろって」
彼は私に見せつけるようにして
さり気なく自分の髪を触りながら言う。
「ふーん。本当、ゲーム好きだね」
彼の袖のボタンが開いてる。
わざとだ。
彼はそうやっていつも
手首の傷を私に見せつける。
昨日も傷をつけたのだろうか。
また、傷が一つ増えた気がする。
「うん。でも勉強はちゃんとしてるよ」
彼は少し苦笑いをして言った。
「そうなんだ」
私はできるだけ
傷に気づかないふりをして
軽く流した。
「…」
沈黙。
いつものこと。
私達は中々会話が続いたことがない。
私が喋らないせいだけど。
だって、彼と話していても
全然楽しくないんだもん。
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