第1章

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「じゃあ、何で僕の名前を読んでくれないの?」 彼は、私の目を見ながら言う。 どこまでも漆黒の闇が続いた 彼の瞳に 吸い込まれてしまいそうで 怖くなって 私は目を逸らした。 そうだ。 思ったら、私 一度も彼の名前を呼んだことがない。 呼ぶ時は 『ねぇ』か『あんた』。 なんで?って知らないから。 そう、私は 彼の名前を知らないんだ。 前に聞いたかもしれない 私が覚えてなくて忘れたのか 聞いてないのか。 そもそも、私たちは いつから一緒にいたんだっけ? 「わかんない」 私はそういって、 彼の顔をみる。 「僕の名前、翔、だよ。音乃瀬翔」 彼は私が聞いてもないのに 自分の名前を教えてくれた。 私が知らないことを 知ってたんだ。 なら何でわざわざ そんな質問したんだろう。
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