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涙で濡れた目を上げると、すぐ上にある優の目が潤んでいた。
ぐいっと袖口で自分の目元を拭うと、次に私の涙も拭ってくれる。
「……っ」
涙を堪える優の姿。
無言で私の手を引き、駅に背を向ける。
目的地もないまま、薄暗い道を歩き続けた。
閑静な住宅街。
その静けさの中に、私と優の耐え切れない想いだけが響く。
「…信じれるわけねぇだろ」
暗闇に向かって、優が叫ぶ。
「信じれるよ」
私は答える。
「後から都合よく話をこじつけただけだ」
その声に、戸惑う優の姿が見える。
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