先生の苦い秘密

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その日、間宮くるみは実験室に忘れ物をした。 黒岩が理科担当になってから、二日目の事だった。 時刻は十九時を回っていた。 帰宅部のくるみは、自宅に一時間弱掛け帰宅した…で、課題として出されたプリントを忘れたのを思い出し、再び一時間弱掛け登校… 「最…悪。」 校庭には、運動部の生徒がまだ練習をしていた。 それが幸いと言えば幸いか… それでも、家で真剣に課題に取り組もうとしていたくるみには、災難以外の何物でもなかった。 実験室の隣、準備室の明かりはついていた。 (黒岩先生…まだいるんだ。) くるみは実験室の扉に手をかけた。 「あ…あれ?」 しかし、スライド式の扉は、ビクともしなかった。 鍵が閉まっているような、物が詰まったような微動しかしなかった。 準備室の扉の方に向かうくるみ。 ノックする。 …しかし、返事は全く返ってこなかった。 (もしかして…明かりつけっぱなしで先生帰っちゃったとか?) そういう考えが、一瞬頭の中を過ったくるみだったが、すぐさま首を横に振った。 (いやいやいや…あの神経質な先生が…あり得ないでしょ。) 「…仕方ないか。」 そう言って、くるみは実験室を後にした。
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