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「っと、ほれ。」
「…?」
再び手を出す黒岩。
キョトンとするくるみ。
「鍵、貸せよ。返しに行くから。」
「あっ!はい…あの、ありがとうございます。」
そう言って、くるみは鍵を持った手を黒岩に差し出す。
と…
ギュウ―――
「っ!?何っ///」
「一緒に返し行くか?」
握りしめられた手は、柔らかく、それでも振り払う事は出来なかった。
片手で眼鏡をかけなおし、黒岩はそのまま出口へと歩き始めた。
「なっ!?ふざけないでくださいっ!!は、離してっっ!!」
「んだよ、離さねぇとは言ってねぇだろ?」
「はっ?」
くるみの手から、冷たい鍵が攫われた。
黒岩の片手に、鍵が揺れる。
「行くぞ。送ってやる。」
「えっ…?」
「もう、八時回ってるぞ。危ない。」
「…いいです。こういうの、よくないです。」
「黙ってろ。女子が一人で下校する時間じゃねぇよ。」
思いがけない、優しさ。
やはりこの担任は分からない、とくるみは思っていた。
実験室の施錠をし、暗くなった廊下を歩く。
黒岩の少し後ろを、くるみは歩く
途端に、くるみを襲う悪寒。
恐怖…
「…。」
「どした?急に静かに…」
「…。」
黒岩は、微かに震えるくるみを見た。
(…ったく、世話の焼ける)
「おい…こっちこい。」
「ぇ…?」
「いいから。」
黒岩は立ち止まり、くるみの手を再び取った。
「なっ///」
「お前、暗所恐怖症か?だったら、無理して取りに来なくても良かっただろうが。」
「だ…だって、忘れたとか言ったら、先生怒りますよね。」
「当たり前だろ、立場上怒らなきゃマズイだろ。」
そう言って、黒岩はくるみを見下ろす。
くるみは俯き、素直に黒岩の手を握っていた。
「…もし、これから忘れモンしたら、学校に連絡してこい。」
「へ?」
「で、俺を呼んでもらえ。持ってくから。」
「はぁっっ!?何ですか、そのサービス!!!」
「うっせぇ、ここまでやってやるんだ。言いつけんじゃねぇぞ?」
「先生の本性なんて、言いふらしませんよ!!仮に言いふらしても、先生なら上手く誤魔化せるでしょう?」
叫ぶくるみ。
全くその通りだった。
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