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教室は、通常運転を開始する時間。
午前九時
高校の始業時間だった。
そこに彼女はいた。
「…。」
窓際の、一番後ろの席。
ボンヤリと座る彼女。
栗色の髪がふわふわと秋の風に揺れる。
夏休みも終わり、涼しくなり始めていた。
「おはよう、くるみ!」
彼女に友人が声をかけた。
彼女、間宮くるみは友人に笑いかけ、おはようと言う。
「そーいえば、今日、担任来るらしいよ?ほら、マッツーの代わりの。」
「松上先生の代わり?」
「そーそー、イケメンだといいよね!」
「そーだね。松上先生もイケメンだったからっ♪」
担任の松上先生。
このクラスの担任教師だったが、一身上の都合で退職したのだ。
その代りの教師が、今日来る…ということで、このクラスは妙に浮き足立っていた。
キーンコーンカーンコーン…
始業のチャイムが響き、席についていく生徒たち。
それと同時に、教頭にあたる人物と…
「えー、このクラスの新しい担任の先生になってくれる方の…」
クラスの女生徒がざわつく。
細ぶちのフレームの眼鏡。
少し白めの肌に、切れ長の瞳…しかし、何故か幼さの感じられる表情。
黒髪は少し長めで、後ろに束ねられていた。
(イケメン、キタっっ///)
女生徒、ほとんどの頭に浮かんだ言葉であるだろう。
その人物は、教卓の前に立つとスッ、と一礼した。
教頭はその後ろで、黒板にチョークを走らした。
―黒岩 真咲―
「黒岩 真咲(くろいわまさき)です。」
事務的口調…
抑揚が無く、淡々とした口調、響き、トーン。
感情が読めない表情で、その新担任は教室を見渡していた。
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