6人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、俺と一緒ってのは迷惑だわな。」
「そ…そんな事ないですよ。」
「こーんな不良教師と一緒にされんの不快だろーが」
「不良って…」
クスリと微笑むくるみ。
そんなくるみに安心したのか、黒岩はぐっ、と背伸びをし立ち上がった。
「少し落ち着いたな…っと。」
ほれ、と言いながら黒岩はくるみの肩を叩いた。
くるみは立ち上がった黒岩を見上げ、首を傾げた。
黒岩は少し前方を指さしていた。
そこには、先程まで水しぶきを上げていた噴水があった。
何故か、水は宙を舞っていない。
「あれ…?」
「もうちょっとかな…?」
黒岩は暗闇の中、目を凝らし左腕に着けていた腕時計を見ていた。
くるみは黒岩に向き直り、疑問の声を上げた。
「あの…?何…」
「ほれっ!」
再び噴水の方に顔を上げた黒岩。
と―――
プシュ――!!
シャァッ――――
噴水は再び、水を撒く。
しかし、それだけではなかった。
「あっ…わぁっ!!」
明るく、眩しく…
光と共に、水が舞う―――
「きれ…綺麗っっ!!」
「だろ?二十一時半だけ、この光が作動するんだ綺麗なもんだろ。」
「知らなかった…。」
「この公園…十年前から変わってねぇの。十年前の九月三十日…この公園ができたんだ。」
「それで…夜の九時半にだけ?」
「そう。夜にしか…暗闇にしか見えない綺麗なもの、だ。」
暗闇の中…
光は、舞い踊り続けた。
くるみの瞳は、光を見つめ、映し続けた。
その光が、水と共に、徐々に終息していくまで…
「ありがとうございます…先生。」
「…どういたしまして。」
帰るか。
そう言った黒岩は、くるみに振り返る。
「…はい。」
くるみは、何の躊躇いも無く、ごく自然な動作で黒岩の手に自分の手を伸ばしていた。
黒岩はきょとん、とした表情でくるみを見ていた。
はっ、としたようにくるみは手を下げる。
「ごごご、ごめんなさいっっ!!私、何考えて…」
「…ったく。世話の焼ける生徒だな。」
「っっっ///」
下げた手は、収まっていた。
黒岩の左手に…
「ま、明日からまた頼りにしてるぜ?委員長?」
その手は今まで感じたどんな光よりも、
くるみは安心し、温もりを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!