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翌日。
放課後の、準備室の扉が遠慮がちにノックされた。
「先生…?」
声が聞こえたとともに、室内でレポートのチェックに勤しんでいた黒岩は立ち上る。
そして、出入り口の扉に向かい開けた。
「間宮か…。入れよ」
「…昨日は、ありがとうございます。」
「いいって。お前の親御さん、優しいのな。何にも怒らなかったじゃん。」
そう言って、黒岩はくるみを室内に入るよう促した。
くるみは、ぺこり、と一礼し入室する。
「あ…あの、邪魔でした?」
「別に?時間はまだあるし、別に早く帰りたいって訳じゃないからさ。のんびりするよ。」
「…ありがとうございます。」
お前、そればっかり。と黒岩は笑った。
くるみも釣られて、笑った。
「で?何か用か?」
「あ…いや、ホントお礼言おうと思っただけで…。」
「…そ?ま、ゆっくりするか?」
黒岩は置いてあったパイプ椅子を広げ、くるみを座らす。
くるみは座る。
「…少し、昔話してもいいですか?」
「…聞くだけな。」
黒岩も、椅子に座る。
くるみの方を、じっ、と見つめた。
すると、くるみは困ったように笑う。
「あんまり見ないで下さいよ…言ったじゃないですか…本当は人と関わるの苦手だって。」
「…。」
「いつも…友達と笑ってるのは…私だけど、私じゃない。…笑っていないと嫌われちゃう、嫌われたら、一人になっちゃう…一人が怖いから…笑う。ズルい私なんです。」
「でも…そう思って行動すんのは…お前の意思だろ。」
黒岩は眼鏡を外し、デスクに置いた。
そして、呆れたように溜息を吐き、窓側に視線を向ける。
そんな様子を見て、くるみはごめんなさい、と呟き息を吐く。
「私…両親が居ないって言いましたよね。」
そして、くるみは語りだした。
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