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私は…いい子じゃないと…いけなかった。
私のお父さんと呼べる人は…少なくとも、二回変わっていた。
一人目のお父さんは、優しい人だったけどそれだけで…
お母さんは浮気した。
それが、私が五歳の時。
二人目のお父さんは…
「お前さぁ…ウザいな。」
何度、殴られたかわからない。
タバコは、私に押し当てられて火を消すものだった。
お酒の瓶は、私に投げつけるものだった。
「お前が、いけないんだぜ?」
そう…
私は…悪い子だから。
でも…
どんなにいい子でいようとしても、お父さんは変わらなかった。
一年生になって、
テストでいつも百点をとっても
絵のコンクールで金賞とっても
お父さんは…
私を見てなかったから…
「お母さん…」
ある日…
お父さんは笑ってた。
私は、お母さんに…
「お母さん…?」
抱きかかえられて…
ガチャン―――
埃の臭いと、暗闇…
「出し…てぇっ…っほ…ケホっ…ゴホッ…」
叫べば叫ぶほど、埃を吸って、咳が止まらなくなった。
「うるっせぇんだよ!!」
ダンっ!!と外から扉が叩かれて…
あぁ、今出ることができてもきっと…
殺されちゃうな…って。
「お腹へったよぉ…」
「お母さん…出して…」
「怖い…暗いよぉ」
カリっ
カリっ
扉をひっかく音で…
私は、私自身の存在を確認するしかなかった…
この暗闇が
私を呑み込んでしまいそうで…
どれくらい、時間が経ったのか分からない…
クロゼット内は、酸素を失うことはなかった。
クロゼットの扉の上の方は、擦りガラスの窓が付いていて…
それが少し、開いていた。
「助けてぇ…お母さん…助けてぇ…」
クロゼットの扉が、開いた。
「くるみちゃんっっ!!」
そこに居たのは、見たことのない人たち。
力任せに引っ張られ、抱きしめられた。
痛いくらいだったけど…
もう、力が入らなくて…
私は、三日間閉じ込められていたそうだ。
お母さんとお父さんは育児放棄とか、殺人未遂とか…
何でもいいけど、人としてしちゃいけない事をした。
二人は、捕まって…
そして、私は叔父夫婦に預けられた。
でも…
今でも、怖い。
いい子でいなくちゃいけない
また、真っ暗に閉じ込められる…と
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