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「…両親の暴力と、育児放棄か。」
「まぁ、ね。だから、私、あんまり両親の顔…思い出せないんです…殴られた記憶しか…」
「母親は…助けてくんなかったのか。」
「後で聞いちゃったんですけど…お母さん、反省してなかったし、脅されても無かったらしいです…お母さんも、私の事いらなかったんですね。」
訥々と話し終えたくるみ。
その顔は、意外にも諦めきった…無表情に近いものだった。
怯えた様子も無く、ただ…淡々と。
「で…何で、それ話したんだ?俺に。」
「さぁ…あ、先生の秘密知っちゃったからですかね?」
「…あっ?」
「ほら…フェアにいきたいんでしょう?」
悪戯に笑って、くるみは言った。
つい最近、黒岩が言った言葉だった。
「秘密の打ち明けっこ…じゃないですか?」
「…俺はてっきり、同情でも誘ってるのかと思ったけど?」
黒岩は腕を組んで、くるみに向き直った。
すると、くるみはきょとん、とした顔になり…
「ふふっ」
不敵に笑った。
「そーですね…私にも、その位の下心あっても…許されますかね?」
「お前…案外性格悪いのな。」
黒岩も、笑った。
「…私。これからもここに来て良いですか?」
「…家で待ってくれてる人が居んだろ。」
「気まずいんですよ…だって、迷惑しかかけてないんですよ?本当の親でもない…存在さえも知らなかった親戚…。無理ですよ…どんなに優しさを感じても…本当の親なんかよりも…あっさりと捨てれる。保護責任なんて…薄っぺらいモノなんですから。」
「…逃げても仕方ないだろ。」
「できるだけ…イヤな事からは逃げたいじゃないですか。一時しのぎでも、ね。」
沈黙が、降りる。
黒岩は、それ以上何も言えなかった。
何も…口出ししてはいけない気がしたのだ。
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