黒鬼先生と委員長

4/8
前へ
/27ページ
次へ
「…以上。次、実験室に集合するように。」 一限目が終わり、空気は少し柔らかくなった。 そう言って、黒岩は足早に教室を出て行った。 途端に教室中から、溜息が響いた。 「キッツ…」 「鬼のセンセー…」 「マッツー…帰って来て…」 机に突っ伏す生徒数名。 頭を抱える生徒大半。 「…くるみ。私泣きそう。」 「…確かに、あの先生厳しいね。」 くるみは、友人と苦笑いを浮かべる。 一限目は、黒岩曰く「確認」の時間だった。 聞こえはオリエンテーションに聞こえなくもないが、そのような生易しいものではなかった。 「生物、物理の教科書を出して下さい。」 そう言われて、各々に教科書を出し始めるクラスメイト達。 「どこまで進んでいますか?」 そう言って、黒岩は一番前に座る男子生徒に問う。 男子生徒は自信なさげだが、教科書のページ数を答えた。 すると 「では、そのページまでに出てきた物理学者、生物学者の名前…及び唱えた定義や法則など…何を発見したのかでも構いません…順に言っていきなさい。誰でもいいので挙手をして。ページ順で無くともかまいません。」 教室が再び凍りつく。 沈黙が流れる。 「どうしましたか。これでは授業が進みません。」 「あ…の。」 そこでようやっと挙手をした一名の生徒。 間宮くるみだった。 「どうぞ。」 「あの…松上先生から、進行状況…ある程度聞いてないんですか?」 恐る恐る、言った。 それでも、くるみは黒岩をじっ、と見つめ返していた。 意志の強い、その瞳は答えてほしい、と必死に訴えかけていた。 そんなくるみに、黒岩はすぃ、と目を細め答えた。 「確かに…聞いてます。ですが、だから何なのですか?」 「だ…だったら、私たちに聞かなくても…」 「はぁ…アナタ達は勘違いしているようですね。ただ進行状況を把握するのなら、もっと合理的に行動しますよ。」 「じゃあ…」 なんで?とくるみは顔で訴えていた。 教室の空気が、ざわついた。 「アナタ達の理解度…そうですね、分かりやすく言うならアナタ達のレベルを確かめているのですよ。」 「なっっ!?」 くるみは、それこそ棒立ちのまま硬直していた。 教室はざわつき、明らかに反感の意思を示していた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加