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「…以上。次、実験室に集合するように。」
一限目が終わり、空気は少し柔らかくなった。
そう言って、黒岩は足早に教室を出て行った。
途端に教室中から、溜息が響いた。
「キッツ…」
「鬼のセンセー…」
「マッツー…帰って来て…」
机に突っ伏す生徒数名。
頭を抱える生徒大半。
「…くるみ。私泣きそう。」
「…確かに、あの先生厳しいね。」
くるみは、友人と苦笑いを浮かべる。
一限目は、黒岩曰く「確認」の時間だった。
聞こえはオリエンテーションに聞こえなくもないが、そのような生易しいものではなかった。
「生物、物理の教科書を出して下さい。」
そう言われて、各々に教科書を出し始めるクラスメイト達。
「どこまで進んでいますか?」
そう言って、黒岩は一番前に座る男子生徒に問う。
男子生徒は自信なさげだが、教科書のページ数を答えた。
すると
「では、そのページまでに出てきた物理学者、生物学者の名前…及び唱えた定義や法則など…何を発見したのかでも構いません…順に言っていきなさい。誰でもいいので挙手をして。ページ順で無くともかまいません。」
教室が再び凍りつく。
沈黙が流れる。
「どうしましたか。これでは授業が進みません。」
「あ…の。」
そこでようやっと挙手をした一名の生徒。
間宮くるみだった。
「どうぞ。」
「あの…松上先生から、進行状況…ある程度聞いてないんですか?」
恐る恐る、言った。
それでも、くるみは黒岩をじっ、と見つめ返していた。
意志の強い、その瞳は答えてほしい、と必死に訴えかけていた。
そんなくるみに、黒岩はすぃ、と目を細め答えた。
「確かに…聞いてます。ですが、だから何なのですか?」
「だ…だったら、私たちに聞かなくても…」
「はぁ…アナタ達は勘違いしているようですね。ただ進行状況を把握するのなら、もっと合理的に行動しますよ。」
「じゃあ…」
なんで?とくるみは顔で訴えていた。
教室の空気が、ざわついた。
「アナタ達の理解度…そうですね、分かりやすく言うならアナタ達のレベルを確かめているのですよ。」
「なっっ!?」
くるみは、それこそ棒立ちのまま硬直していた。
教室はざわつき、明らかに反感の意思を示していた。
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