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キーンコーンカーンコーン…
終業のチャイムが鳴り、号令がかかる。
「では…次の物理の授業までに、レポートを提出するように。」
「…へっ?」
クラスメイトの動きが、一斉に止まった。
「聞こえなかったのですか?レポートを提出してくださいと言っているのです。」
「えっと…今まで、レポート…あまり書いたことなかったので。」
皆が思ったであろうことを、くるみは代弁した。
事実だった。
すると、黒岩は呆れ返ったように今日何度吐いたかわからない溜息を一つ、零した。
「今までは今まで、でしょう。何か問題でも?」
「えっと…具体的に何を書けばいいのか。」
「…はぁ。では、レポートという言い方を訂正しましょう。好きに今日の授業について纏め上げてきてください。感想でも、質問事項、疑問点、何でも構いません。ノートならば一ページ分。ルーズリーフ用紙でも構いません。図形を入れても結構です。箇条書きでも構いません。」
「あ…はい。」
「なお、評価に値しないものは処分します。で、後日もう一度書き直しにさせます。毎授業提出してもらいます。以上です。」
「………。」
授業は、とても分かりやすい。
親近感の持てる、内容だった。
しかし…
この担任だけは、仲良くなれない…と
上手くいくのか、このクラス…と
クラスの人間全員が、思ったことだろう。
そして、その日の内に、誰かが名づけ、広まるあだ名。
黒岩 真咲…あだ名は、黒鬼…と。
九月…
残暑と呼べるモノの中に、少しづつ秋の涼風を感じさせる頃の出来事だった。
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