決壊

10/19
前へ
/61ページ
次へ
 痛覚を遮断する魔法は存在する。だが、それを使えば身体強化も解けてしまう。  そうなれば男のスピードにも力にも対応出来ない。  けれど、そんなこと必要ない。 「戦力半減だとか思った? 残念、アンタの負けだから」  男の目の前に小さな閃光を発生させる。  一瞬、目を瞑ったことを私は見逃さない。  腹に蹴りを食らわし、男を吹き飛ばす。  身体強化を解除し、魔力に余裕を作り左手を壁まで飛んだ男に向けた。  真っ赤に染まった左手にダガーなんてハイカラな装飾。笑えるよ。  私の手を中心で魔方陣が出来上がり、魔法が産み出される。  氷の針だ。  放たれた氷は男の腕、太股、足に刺さり、壁に固定される。 「左手の代償、高くついたね」  残ったほんの少しの魔力の右腕の強化に回し、大剣を引き摺りながら男の元へ向かう。 「何も聞かないし、聞きたくもない……アンタ、弱かったよ」  吐き捨てるように言って私は大剣を掲げ、終止符を打った。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加