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玉座の間、1人残った私はダガーを抜き捨て、転げ回った。
「痛い痛い痛い痛い!」
痩せ我慢だった。悟られないようにするためだけの。
実際、私がちっぽけな閃光を発生させられたのは痩せ我慢のお陰だ。
描写こそないが、一瞬、男の動きが遅くなった。
「魔王様!」
転移とか言った便利魔法を使ったのだろう。気配もなくレイラが私の側に現れた。
転がることを止め、横たわりながらレイラを見上げる。
レイラの表情から読み取れるのは怒気と殺意。それと心配が少々。
「レイラぁ、痛い。ほんと痛い」
既にダガーが抜けた左手をレイラに差し出す。
レイラは左手で私の手を取り、右手を私の貫通した手に添える。
それだけでも相当痛いのだが、苦痛を押し殺し黙っておく。
「そんなに強かったの? 呼んでくれたらよかったのに」
「いや、弱かった。けど、ハンデがありすぎたから」
魔法が十分に使えれば苦戦などしなかった。
「そんな時の私なのに。まぁ勝ったのなら文句は言わないよ」
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