4人が本棚に入れています
本棚に追加
玉座の間に静寂が訪れるのはまだ早い。
私は“何かがある何もない空間”に向かって言い放つ。
「ねぇ、いつまでそうしているつもり? 出てきたら?」
私が違和感に気付いたのはレイラが魔法を使ったときだ。
光が歪んでいた。
空間は色をつけ始め、形を形成していく。
男だ。フードを深く被っているせいで顔までは見えないが、茶色の上着越しに黒の服が見える。動きやすさを重視してか少しだぼついたズボン。
だが、服の下にあっても隠しきれていない筋肉。
二の腕なんて私の倍以上はあるだろう。
「驚いた……魔王が女で、それも子供だったなんて」
低い声は驚きよりも威嚇を孕んでいると感じたのは私が敵だからだろうか。
……どちらでもいいか。
今から戦うのだから些細なことを考えても仕方がない。
玉座から立ち上がり、右手にほんの少量の魔力を流し、魔法を展開する。
攻撃用の魔法などではない。
私の右手に光が宿り、それを握る。直後、光が爆発したように弾け飛び、私の身長よりも大きい大剣が姿を現した。
最初のコメントを投稿しよう!