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「まー、嫌なら別に良いけどヨ。お前昨日行く場所ないみたいなこと言ってたよな?だから、居たいならいりゃ良ーし、嫌なら出てけ。……で続きだけど、昼間は大体店にいる。用があれば、居間からでも叫べば下の店に届く。まぁ、面倒じゃなけりゃ店に降りてくりゃいい」
それこそ、家の紹介ついでみたいに目の前の彼から軽い口調で続けられる言葉に、思わず何かウラがあるんじゃないかと疑ってしまう。
だって、そんな、優しいだけの人間なんているはずないから。
「あの、そんな、どうして、僕なんかにこんなに、良くしてくださるんですか」
廊下を折り返し居間に戻りかけた足を止め、僕は早鐘のように打つ鼓動を誤魔化すため握った両手をグッと押し付け顔をあげた。
「そりゃ、まぁ、気が向いたからだな」
なのに、返事は…気が向いたから?
食事時の笑みも消えて、また無愛想に戻った彼の顔をじっくり眺めても……返事が変わる訳じゃない。
「それだけ、ですか?」
少しガッカリしたのと、大きな安堵感。
この人は僕を変な目で見ないし、昨夜も部屋には来なかった。
特別僕に興味や…好意が無いのは残念だけど…お人好しっぽいこの人を、ちょっとくらいなら信用してもいいのかな。
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