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小さな村を幾つか抜けた。
その間に、サフィンは生後半年を過ぎて丸まるとはいかないまでも体つきはしっかりと育ったようで、ようやく一人座りが出来るようになり、離乳食が始まった。
「ほら、サフィン。おいしいおいしいお芋だよー」
サラダムの妻であるフラルラさんには、もう少しすればハイハイを始めるから目を離せなくなりますよ?と笑われたが、元よりサフィンを俺の目の届かない場所へやるつもりはないから問題はないな。
だがまあ、安全面には気を配る必要があるだろうな……とフィーと二人頭を悩ませていたりするのだが。
「んー、やっぱり食べてくれない……」
昼休憩中。馬車の見える木陰に移動し、家族でひとまとまりになり布を広げて地面に腰を下ろしている。
「どうした?」
「サクヤさん、サフィンが」
見れば、ほとんど減らない芋のスープと困り顔のフィー。サフィンはと言えば、珍しく顰めっ面をして唇を固く結び、食事は断固拒否の姿勢で小生意気にもフィーに抵抗している。
「サフィン、食わないと大きくなれねぇぞ?折角フィーが作ってくれたのに……って、うお!いっちょ前に反抗か?全く、ばっちいだろー」
頬を突っつき説得を試みるも、唾を吹きかけられたぜ。
「前の村で貰ったミルクで作ったパンの離乳食も、果物を潰したスープも、全然食べてくれなくて……もうどうしたら」
離乳食を始めた当初はまだ慣れないながらも楽しんでいたが、ここ数日はずっと鬱々としたようすでサフィンを見てはため息を吐き、夜も寝返りが多く、よく眠れていない。
「フィー、あまり思い詰めるな。子供の成長はそれぞれなんだ。サフィンはまだ、離乳食って気分じゃないのかもしれないだろう?」
俺が薬師の付き合いでサラダム達と飲みに行ったり、御者台につめたりしている間も、フィーはサフィンと1対1で向き合い、さらにはフラルラさんたちとの関わりもあった。それらが負担として重くのしかかっていたのた。
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