第3章 子育て―乳児編

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《ほとけつくってたましいいれず》 「まさか、薬師が居なくなるとは」 「まー思っても見ないよねぇ」 毎朝同じ時間に出仕し、同じ時間に書類を片づけ、同じ時間に帰宅する。そんな当たり前の日課を崩される日が来ようとはな。 荒く息を吐き、目の前のマイペースな同僚をギロリと一つ睨んでやるが、いつもと同じように全くダメージを受けている様子はない。部下たちは一瞬ですくみ上がるというのに、こいつは全くどんな図太い神経をしているんだか。 「キール、お前のところはどうなんだ?」 軍の中でも隊長格ともなれば、入隊時代の弱々しい顔つきも、其れまでの厳しい訓練や戦闘により多少は男らしくなるものだが……こいつはいつ見ても女のように細く色も白い。顔つきも柔らかく、まったく男らしくなどないのだ。 キール・マーディンは俺と同期で親友と言っても良いが、正直本人の外見的なものは理解出来ずにいる。
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