第3章 子育て―乳児編

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《ほとけつくってたましいいれず・四》 ……私が、リアノーファの人生を狂わせなければとどれほど悩み苦しもうと、もう二度とリアノーファと共に馬に乗り遠乗りすることも、麦畑を走り回るリアノーファの笑顔を見ることもない。 それは、全て、私の罪だ。 「だが、薬を使用してからの営みの回数や、街を出てからの両性体であるリアノーファの母胎への負担を考えるに子供は出来ていても、流れたか、もう亡くなっていると思いこんでいた。……愚かだったよ」 自嘲し、薄く笑う私にキールは慌てたように言葉を探している。 「……でもっ、探せば」 「見つけた際、リアノーファは病にうなされ弱っていたが近くにその子はいなかった。あの時リアノーファは意識がなく、話を聞くことができなかったが、回復してからは少しずつ話し始めてな。あの時、私の子は薬を買う金のため働きに出ていたらしい」 「……いい子じゃないか」 そうだ。心の優しい子なのだろう。 そしてきっと、私を許しはしないだろう。 「……何度も使いを出し探しに行かせたが何処にも居ない。あの辺りは田舎だからな、余所者相手に内の情報を話したがらないのもあるだろうが。……リアノーファには、子供の行方が分からないなどは口が裂けても言えるわけがないっ!どうにか休暇をねじ込んで、自ら探しにと思った矢先に薬師が行方不明だとっ?!私には、我が子を捜す、時間すら与えられんのか……」 「エディン、落ち着きなよ」 「落ち着いて居るさ。私はただ、自分の子供を見つけ一目で良い、この瞳に写し、一言で良いからその声を聞いてみたいだけだ。そして、リアノーファの事を伝えてやりたい。急に独りきりにされ、危ない目にあっていないか、確かめたいだけだ」 「……エディ」 「ただ、それだけなんだ」
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