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「っ、そんなことはわかってます!僕はお金が、彼には一時の慰めが必要だった……はじめからその約束です」
「ま、ならいいんだけどヨ。……で?おろすだろ?金は契約違反の分もたんまり搾り取ったからな、今渡す分に加えとくぜ」
腰にくくりつけた皮袋を二つ、薄汚い床に放られ、泥や何かの死骸の上にこぼれ落ちた金貨がチャリ、と音を響かせた。
「……はい」
「で、次の仕事は?どうすんだ」
「あの、僕は、もう辞めようと思っています」
「……」
「あ、あの、お金はもう十分です。これ以上は……」
「ふーん。足洗うのかよ?まぁ、辞めるってもこの仕事が初めてだったんだしなぁ。しっかし惜しいぜ?売れっ子になれるツラしてんのによ」
「お願いします!」
「……ま、仕方がねぇな。そんな頭下げなくたって、裏には裏のルールがあんだよ。辞めたい奴は止めねーし、よっぽど恨み買ってなきゃなぁ、追いかけやしねーよ。安心しな」
「じゃあ、」
「だが、ソレについては一筆書いてもらうぜ?相手方とお前と俺が持つ分だ」
「……はい」
「ま、大金せしめたんだ。達者に暮らせや」
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