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「それも縫うのじゃ。当たり前じゃろ」
ついていけない……と僕は思う。おしめの事も、僕は縫い物なんて出来ないし、どうしよう……。
「あのっ、他に、必要なものや気を付けることはありますか?」
僕の子供の事なのに、自分じゃなにも出来ない現実に少し焦って、それで、サクヤさんの手を強く握り直して、ベッドの上からお医者の先生へ身を乗り出し質問したのに。……返ってきたのは恥ずかしくて思わずサクヤさんの背に隠れてしまうような回答だった。
☆
お医者の先生はまばたきを一つ。それから、顎髭を撫でて一つ頷くとこう言った。
「ふむ……お主ら、毎日寝台を共にしておるか?」
「……え?」
一瞬で、なんだか部屋の中が気まずい空気でいっぱいになって、僕はきっと、笑ってるのか泣いているのか分からないくらい唇が歪んで変な顔をしていたと思う。つまり、それくらい、恥ずかしくていっぱいいっぱいだった。
「…おい…爺さんよぉ」
「良いからの、今は黙って聞くんじゃ」
ズリズリおしりを引きずってベッドの端まで移動して、サクヤさんの広い背中に掴まった僕をチラリとだけ見てから、二人はまた、低い声で話を続けている。
「___分かっておろうが、両性は薬でもって子を身ごもる。それも、愛と決意あってこそじゃ。子が両親の愛を感じられるよう、毎晩励むように。それも、一度よりは回数を重ねた方がよいじゃろう。その方が体の丈夫な子が生まれると伝えられておる。わかったの。とりあえず必要なものは、赤子の衣服、粉の乳、風呂や普段使い用の清潔な布を数枚、そして愛じゃ。他のものは赤ん坊に合わせて追々揃えりゃええ」
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