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「な、なんだよ」
俺は心にもない邪険な言い草で鏡から顔を背ける。
くそっ、そんな不躾に見んなよ。
俺の心臓が持たねーだろっ。
俺は心の中で悪態を吐きまくる。
「…綺麗だ」
すると突然、低い声が耳元で囁きビクリと顔を起こすと、いつの間にか目の前の鏡には俺の背後に立つブラックの姿が映し出されていた。
俺より頭半分ほど背の高いブラックは屈強な体躯と清潔感溢れる短髪、整った小さな顔を持っている。
ついさっきまで激しい腹筋をしていたにも関わらず、その呼吸は全く乱れていない。
鏡を通して、ブラックの力強く、真摯な瞳と視線が絡み合う。
「ブルー、綺麗だ」
そしてもう一度、嘆息の混じった低い声で先ほどと同じ言葉を吐いた。
「な…っ!」
見る間に自分の顔が朱に染まっていくのを感じる。
こいつが、こんな言葉をくれるのは初めてだった。
俺はうまい言葉も返せず、ただ吐息と共に気恥ずかしさを飲み込む。
すると、ブラックの指先が伸びてきて、俺の右腕にそっと触れた。
「!」
その感触は俺の心臓に期待を孕ませ、壊れそうなほどの激しい鼓動を生む。
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