20人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ」
俺は素っ気なく返事をして、すぐさま部屋を出ようとする。
しかし、桃は強引に俺の前に回り込んできた。
「どしたの?ブルー?何かあった?」
「は?何もねーよ」
俺は桃のクリクリとした大きな瞳を一瞥する。
すると桃は眉間に小さくシワを寄せ、俺の顔を覗き込んできた。
「じゃどうして、ブルー、泣きそうな顔してるの?」
「っ!」
俺はギュッと下唇を噛み締める。
俺が?
泣きそうだって?
「ねえ?」
「な、何もねーよっ!」
俺は桃の何の作為もない真っ直ぐな瞳に見つめられると、胸の中に堪えきれない苛立ちを覚え、桃を突き飛ばすようにその横を通り抜ける。
「わっ、ブルー?!」
そして逃げ出すようにトレーニングルームを後にした。
そうだ、何もねー。
俺とあいつの間には何もねーんだ…。
最初のコメントを投稿しよう!