803人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
少し長めのコール音は
私の不安を煽(アオ)り
鼓動を速めた。
『…もしもし?』
「…稲森です」
少し間を置いて電話の相手が口を開いた。
『…祐介…二宮祐介の兄です』
初めて電話越しに聞くお兄さんの声は
祐介の声によく似ていた。
全国展開されてる大手電機メーカーに勤めるお兄さんは、今は神戸に住んでいる。祐介の2歳年上で、去年結婚して、お嫁さんは妊娠中だと聞いていた。
祐介の実家には何度も足を運んでいるけれど、お兄さんと会ったのはほんの数回。
もちろんお兄さんの連絡先も知らなかったけれど
そのお兄さんからの電話に、私は自然と身構えていた。
最初のコメントを投稿しよう!