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「…お兄さん…、私、昨日、祐介にプロポーズされたんです」
…だから
…いなくなるはずなんてない。
受話器の向こうでお兄さんが言葉を詰まらせる。
『…美澄ちゃん…ごめんな』
お兄さんが何に謝っているのかわからなかった。
そもそも、お兄さんがどうして電話をしてきたのかもわからなくなっていた。
「祐介、電話に出ないんですけど…」
『…美澄ちゃん…』
祐介は私のことを〝美澄ちゃん”なんて呼んだりしない。
でも、たまにはこういうのもいいかもしれない。
「…祐介…会いたい」
私に応えてくれたのは祐介だったのかそうでないのか。
『…ごめん…』
電話の声はそう言った。
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