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(ミラマー村)
村長、リチャーディアン・ジーナスの朝は早い。
まず、ニワトリの鳴き声とともに起床し予定を確認しながら1日の段取りを決める。
「そろそろ、畑を起こさないとな…」
緑がかった長い髪を軽くかきあげながら、リチャードがそう呟いた。
季節はもう時期4月、ヴィクトール運河のある南バレンヌ地方では畑作が始まる季節なのだ。
椅子に腰を下ろして手帳を見る彼に、妻のシャーリーが暖かいコーヒーを差し出した。
「シャーリー、ありがとう」
「リチャード、畑作なら手伝うわよ?」
「いや、この時期は来訪者が多いからすまないが、シャーリーには家にいて貰いたい」
手伝いを申し出たシャーリーに、リチャードがコーヒーカップを片手にそう答えた。
「わかったわ、でも何かあったら言ってね」
「ああ、ありがとう」
リチャードがコーヒーを飲み終えると、立ち上がり上着を羽織った。
「ちょっと出てくる」
「行ってらっしゃい」
リチャードが家を後にした。
(牧場)
家を出たリチャードは村外れの牧場にいた。
積雪が溶けきった畑の土は乾いていた。
「今年は早めにした方がよさそうだな」
リチャードがそう呟いて、土の中に指を差し込んだ。
本来ならばリチャードは農家でない、だが村はまだまだ発展途上であり人が少なかった。
よってリチャードはこの村にない職業を掛け持ちしながら、村長の仕事をしているのだ。
「?」
リチャードが何かの気配を察知する。
「牧場…?」
「な!」
草むらから現れたのは、全身ボロボロのユリアンであった。
リチャードが慌ててユリアンに駆け寄ると、ユリアンは安心したのかその場に崩れ落ち気を失った。
「おいおい…仕方ない病院へ運ぶか」
リチャードがユリアンを抱えて、村へ走り出した。
(ミラマー、村病院)
ミラマーの村長宅の横にある、やや大きな建物がこの村唯一の病院である。
「ブラック!急患だブラック先生!」
リチャードがドアを開けて中に入るや、先生を呼ぶ。
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