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「朝一で急患とは…なんて日だ」
開院まで時間があったせいか白衣だけとりあえず急いでまとい、ブラックがそのままリチャードに駆け寄りユリアンを二人で抱える。
「タチアナすまん!二階の清掃は後にしてこっちを手伝ってくれ!」
「はい!先生」
ブラックが大声で看護婦の名前を呼ぶと、やや小走りで少女が階段を降りてくる。
「とりあえず、ベッド周りはやっとくから点滴に薬各種を持って来てくれ!あとタオルなどセットで!」
「はい!」
忙しそうにタチアナが薬品棚に駆け寄り、ブラックの指示した道具を用意する。
「村長、あんたも手伝えるか?」
「乗り掛かった船だ、今日の仕事は残業にしてでも手伝うさ」
「頼む」
ブラックの頼みを承諾し、リチャードが上着を脱いで白衣をまとった。
「ブラック先生!持って来ました!」
「よし、タチアナはこっちに来てくれ!リチャードはタオルを濡らして来てくれ!」
「はい!」
「了解」
タチアナがすぐに点滴の用意を始め、リチャードが水場へ向かった。
「うぅ」
「お、意識が戻ったか?ここは病院だ、大丈夫か?」
辛そうだが僅かに目を開けたユリアンに、ブラックが問いかける。
「…ブラック?」
「?」
ブラックを見たユリアンは不思議そうな顔をして、そう呟いた。
「?…いかにもブラック、この街の医者だが…お前さんどっかで会ったかな?」
「?」
ブラックもまた不思議そうな顔でそう答えると、ユリアンの脈を測りながら外傷をチェックしていた。
「?」
ユリアンの頭は混乱していた。
自分の治療をするブラックはまさに、自分の仲間で海賊ブラックなのだ。
そんな彼がユリアンを白衣をまとい治療をしている、違和感しか感じないのだ。
「いつから医者に?…海賊は?」
「海賊?」
思わずそう漏らしたユリアンに、ブラックが思わず声をあげた。
「お前さん誰かと間違えてないか?俺はブラックだが、海賊をしていた事は無い。ちなみにブラックの後にジャックもついていない」
「あははは、先生の顔が怖いから海賊に見えたんじゃないですか?」
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