FINAL LESSON 口づけの続き

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(これは……)  緩やかに、穏やかに流れてきた曲は、エルガーの“愛の挨拶”だった。エルガーが妻へ送った愛の贈り物として有名なこの曲は、奏もよく知っていた。 「まだまだお前に聴かせたい曲があるんだ……」  ヴァイオリンを奏でながら御堂がそう囁いたような気がした。 (私も……私も御堂さんに聴いてもらいたい曲がたくさんあるんです。聴いてもらえますか……?) (次に目を覚ました時、一番初めに御堂さんにそう伝えよう。それまで御堂さんのヴァイオリンをずっと聴いていたい……)  これからもずっと、この美しいヴァイオリンの音色を独り占めできるのだ。そう思うと、奏は極上の幸せに微睡んでいった――。                                 END
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